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第47話 飛び立つ鳥

Penulis: 雫石しま
last update Tanggal publikasi: 2026-09-10 09:05:11

 それから、数か月が経った。

 季節は、ゆっくりと変わっていた。

 私は実家の自分の部屋にいた。

 窓を開けると、春の風がカーテンを揺らす。

 柔らかな日差しが、床に落ちていた。

「……暖かい」

 私は窓辺に立った。

 ここへ戻ってきたばかりの頃は、何をしていても胸が苦しかった。

 朝起きても。

 夜眠っても。

 ふとした瞬間に思い出してしまう。

 病院の白い天井。

 点滴の滴。

 あの日の痛み。

 そして。

 守れなかった小さな命。

 何度も自分を責めた。

 もっと早く逃げていれば。

 もっと強く拒んでいれば。

 もっと早く助けを求めていれば。

 けれど。

 一条先生は、何度も言ってくれた。

 ――あなたのせいではありません。

 その言葉を聞くたびに、少しずつ息ができるようになった。

 私は窓の外を見つめる。

「……ごめんね」

 小さく呟いた。

「守ってあげられなくて」

 胸に手を当てる。

 もう、そこに命はいない。

 それでも。

 あの子がいた時間を、私は忘れない。

 短い時間だったけれど。

 確かに、私の中にいた。

 私が愛した、大切な子だった。

     ◇

 離婚が成立した
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     その日は。 朝から落ち着かなかった。 何度も時計を見てしまう。 午前十時。 十時十五分。 十時二十五分。 そして。 十時半。 搬入口へ続く廊下から、車の音が聞こえた。 納品業者が来た。いつもとは違う時間、ベビーベッドが運び込まれる。 私はリビングにいた。 龍斗さんは書斎にいる。 美和さんはキッチン。 警備員は玄関側。 昨日、私は覚えた。 人の動き。 警備員の交代。 搬入口の扉が開く時間。 そして。 業者が荷物を運び込むとき、一瞬だけ人の出入りが重なることも。 今日。 ここから出る。 私は朝から何度も自分へ言い聞かせていた。 怖い。 もちろん怖い。 でも。 ここに居続けるほうが。 もっと怖かった。 私はお腹へ手を当てた。「大丈夫」 小さく呟く。「お母さんが守るから」     ◇ 十時三十分。 キッチンから、美和さんの声が聞こえた。「ありがとうございます。こちらへお願いします」 業者が来た。 扉が開く。 閉まる。 また開く。 人の声が重なる。 私は立ち上がった。「奥様?」 美和さんが振り返った。「少し、部屋へ戻ります」「はい」 私は廊下へ出た。 心臓が激しく鳴っている。 けれど。 歩く。 搬入口のほうへ。 一歩。 また一歩。 警備員がこちらを見る。「奥様」「……はい」「どちらへ?」「少し外の空気を吸いたくて」「申し訳ありません」 警備員が立ち塞がる。「社長から、外へ出さないように指示されています」「……」 私は足を止めた。 やっぱり。 でも。 ここで諦めるわけにはいかない。「搬入口へ行くだけです、ベビーベッドが早く見たくて」「それもお控えください」「どうして?」「社長の指示です」 私は唇を噛んだ。 そのとき。 搬入口の扉が開いた。 業者の男性が荷物を運び込んでいる。 警備員の視線が、一瞬そちらへ向いた。 今。 私は走った。「奥様!」 後ろから声がする。 私は搬入口へ向かった。 扉の向こう。 外が見える。 ほんの数メートル。 あと少し。 あと少しで。 外へ出られる。 私は手を伸ばした。 けれど。 腕を掴まれた。「お待ちください!」「離して!」 私は必死に振りほどこうとした。「離してくださ

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